プロフェッショナルの流儀

痰壺の矜持。

 

私には三人ほどの部下がいる。

これがもう、揃いもそろってお話し好きだ。

まあ、その内容は主にクライアントに対する愚痴であるのだが。

クライアントに対する不満はもちろん相手に言うわけにはいかない。

なんといっても商売上、お客様なのだ。

だからその不満の捌け口は、自ずと上司である私に向けられるのだ。

 

そんな状況を知っている別の同僚と仕事で移動が一緒になった。

その際、色々話をした。

『おめーも、大変だな』と笑う同僚に対して、私は持論を述べた。

「我、痰壺なり」と。

 

私という存在は部下が不平不満を吐き出すための、痰壺なのだとずっと思っていた。

吐けば皆、スッとして、また仕事に向かえるのだ。

ならば、思う存分吐けばいい、そう納得していだが、同僚の前ではつい本音が、出た。

 

「みんな痰を吐くだけ吐いて、ほったらかしやねん」

皆、気ままに痰を吐いても、痰壺の掃除など誰もしないのだ。

いい加減、痰壺である私、痰だらけや。

私に溜まった痰、どーしたらええねん。

誰が掃除してくれるのん?

 

ぶすくれた私の発言に同僚は大爆笑していた。

電車の中だというのに『痰壺www痰壺て!』そう言って手を叩いて大喜びしていた。

デカイ声で痰壺ゆーな。

 

それを見ていたら痰まみれの痰壺である自分も、まあ何かの役にたっているのかと思えて、笑った。

でも、たまには痰壺の掃除してな。